経団連提言の進捗状況に対する評価

経団連が 2015 年に公表した「財政健全化計画の策定に向けた提言」では、歳出改革の具体的な取り組みとして、社会保障給付や利用者負担の適正化を中心とする社会保障改革を求めましたが、その進捗に関するレビューがされています。

 事項  評価
ケアプランの適正化による過剰な介護サービスの見直し  △
 介護予防や給付の抑制に向けた自治体の取り組み状況の把握  △
 軽度者(要支援者等)に対する、生活援助や福祉用具貸与等の保険給付を見直し  △
 ケアプランの自己負担導入  ×
 要介護度に応じた利用者負担  ×
 2割負担対象者の拡大  △
 給付単価切下げ(診療報酬・介護報酬のマイナス改定)  ×

※ ○:成果が得られた。△:一部で成果が得られたものの、不十分な部分がある。×:成果を得ることが出来ていない。-:評価そのものが困難。

そのうえで、以下を提言しています。
〇歳出規模の大きい社会保障と地方財政の分野では、経団連の提言で掲げた項目を見ても、これまでの成果が不十分なものや、成果を得ることが出来ていないものが多く、より踏み込んだ改革に着手する必要がある
〇社会保障分野については、国費(社会保障関係費)の伸びだけではなく、足もとにかけて増加の続く保険料負担の抑制に資する社会保障給付そのものの伸びの抑制策の実行に踏み込むべきである。
〇特に、「給付の適正化を通じた過剰な給付の削減」、「真に必要な人への真に必要なサービスの給付」、「利用者負担の適正化」等の観点から、実効性のある改革に取り組むべきである。
〇こうした改革は痛みを伴うものとなるが、財政健全化のみならず、制度の持続可能性の確保の観点から、必要不可欠な取り組みである。
〇具体的な検討に際しては、国民の理解を得るべく、ICT化やマイナンバー等から得られるデータに基づくエビデンスも積極的に活用していくことが有効である。
〇予算に関しては集中改革期間の「目安」以下とすべきである。その際、後期高齢者医療の自己負担の引き上げなど社会保障給付そのものの伸びの抑制策を着実に実行すべきであり、医療保険制度や介護保険制度における総報酬割の導入のような財政調整による財源捻出には頼るべきではない。
〇併せて、社会保障給付そのものの伸びの抑制策の効果を事後的に評価・検証し、更なる改革の推進に向けたPDCAサイクルを強化すべきである。

そして、最後に「2025 年以降を見据えた社会保障制度のあり方」について以下としています。
〇毎年の予算編成とは別に、より長期的かつ制度横断的な全体像を踏まえた検討が求められる。
〇団塊の世代が全て 75 歳となる 2025 年以降も見据え、年金だけでなく、医療・介護等を含めた分野横断的な社会保障の将来見通しを示し、負担と給付のバランスの取れた持続可能な制度とするための改革に向けた議論を仕切り直すべきである。
〇検討の前提として、景気変動への機動的な対策を講じた上で、2019 年 10 月の消費税率 10%への引き上げを着実に実行し、全世代型社会保障制度の確立に確かな一歩を踏み出すことが不可欠である。
〇その上で、歳出改革を通じた給付の効率化・適正化は当然のこととして、次世代への負担の付け回しのさらなる拡大ではなく、国民負担の増加を伴う安定財源の確保は避けて通れない課題である。
〇社会保障制度に対する将来不安を払拭し、広く国民全体で支える観点から、税率 10%超への消費増税も有力な選択肢の一つとし、国民的な議論を喚起する必要がある。

出所:財政制度分科会(平成30年4月17日開催)