新処遇改善加算Ⅰ導入効果は果たして??-平成29年度の介護従事者処遇状況等調査

介護従事者処遇状況等調査は、介護報酬改定が介護従事者の処遇改善に反映されているかの検証を行うとともに、次期介護報酬改定のための基礎資料を得ることを目的とした調査です。今年度(平成29年度)の調査結果は平成28年度に導入された新処遇改善加算Ⅰ導入後の初めての調査結果として注目を集めています。

〇介護職員処遇改善加算の取得(届出)の状況
当該調査以外でも公表されていますが、ほぼ同じような傾向がでています。

〇介護職員処遇改善加算(Ⅰ)を取得(届出)している事業所が満たすキャリアパス要件(Ⅲ)の内容
「経験に応じて昇給する仕組みを設けている」「資格等に応じて昇給する仕組みを設けている」割合が高く、「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けている」の割合は10ポイントほど低い状況です。これは処遇改善加算Ⅰの取得を最優先にした事業所が一定数ある結果と推測されます。

〇介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の取得(届出)が困難な理由
介護職員処遇改善加算(Ⅱ)を取得(届出)している事業所における加算(Ⅰ)を取得することが困難な理由をみると、「職種間・事業所間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため」「昇給の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」の回答が高くなっています。

2019年に予定されている次の処遇改善加算(新しい経済政策パッケージで提示された事項)では、現在の処遇改善加算では算定の対象外とされている「介護職員以外の賃金改善」に言及している点からも注目です。

〇介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の今後の取得(届出)予定
介護職員処遇改善加算(Ⅱ)を取得(届出)している事業所における加算(Ⅰ)の今後の取得予定をみると、「今後取得予定あり」が37.7%。また、取得が困難な理由として、「昇給の仕組みをどのようにして定めたらよいかわからないため」と回答した施設・事業所では「今後取得予定あり」の割合が高まっています。

〇介護職員処遇改善加算(Ⅱ)の取得(届出)が困難な理由
介護職員処遇改善加算(Ⅲ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における加算(Ⅱ)を取得することが困難な理由をみると、「キャリアパス要件(Ⅰ)を満たすことが困難」が半数超となっている。

〇介護職員処遇改善加算を取得(届出)しない理由
介護職員処遇改善加算を取得(届出)していない事業所における加算を取得しない理由をみると、「事務作業が煩雑」が51.3%、以下、「利用者負担の発生」「対象の制約のため困難」が続きます。

処遇改善加算を取得した場合、介護サービスの利用者負担も増えることになります(通常の利用者負担は1割。所得により2-3割負担)。

〇介護従事者等の給与等の引き上げの実施方法
介護従事者等の給与等の引き上げの実施方法をみると、「定期昇給を実施(予定)」が66.4%、「各種手当の引き上げまたは新設(予定)」が44.7%、「給与表を改定して賃金水準を引き上げ(予定)」が22.5%となっています。

〇介護従事者等の平均給与額・平均基本給額の状況
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)を取得(届出)している事業所における介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額について、平成28年と平成29年の状況を比較すると、13,660円の増。また、平均基本給額は同3,260円の増となっています。

〇給与等の引き上げ以外の処遇改善状況
給与等の引き上げ以外の処遇改善状況をみると、資質の向上では、「介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修等の受講支援」の実施率が、労働環境・処遇の改善では、「事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の所在の明確化」や「ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善」の実施率が高くなっています。

出所:平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果