我が国の財政に関する長期推計

高齢化による社会保障給付等の増加が将来の財政に与える影響を分析するため、2060年度までの長期の財政の姿を展望し、2060年度以降に債務残高対GDP比を安定させるために必要な基礎的財政収支(PB)の恒久的な改善をある年度で一回で行うと仮定した場合の収支改善幅の試算データが財務省より公表されました。

前提として、長期的安定のためには、(1)2020年度時点でのPB赤字の解消や(2)少子高齢化に伴う歳出増対応に必要な収支改善幅に加え、(3)金利・成長率の格差に伴い必要な収支改善幅を確保する必要がある。としている点に注意が必要です(2020年度でのPB赤字解消は先送りされました。。。)。

論点

長期的な債務残高対GDP比の安定に必要となる2020年度時点の収支改善幅は、①2020年度時点のPB赤字解消に必要な収支改善幅は増加するものの、②GDPの基準改定等に伴い、少子高齢化に伴う歳出増(対GDP比)が低下し、③現下の低金利状況に伴い、要収支改善幅が圧縮されることから、前回試算(2015年10月)と比較すると、 多少縮小しているが、なお巨額。特に③については、大胆な金融緩和による低金利という一時的で特殊な状況に主に起因するものであり、金利情勢に依存した形での財政再建は持続可能とは言えない。金利情勢に左右されることなく、引き続き歳出改革に取り組むことが必要

 基礎的財政収支(PB)黒字化の達成年度を後ろ倒しにすればするほど、後年度において必要となる収支改善幅は拡大(遅延コストの発生)。1年目標を後ろ倒しするごとに、毎年約1.0~1.2兆円の追加的負担が発生

 高齢化に伴う医療費・介護費の伸びを背景に、社会保障支出は一層増加の見通し。社会保障支出は、GDPの基準改定による影響など試算前提の変更等により、前回試算より若干低下している一方、医療の高度化により医療費が現在の想定を上回るスピードで増加する可能性についても留意が必要。こうした中、必要となる日本の収支改善幅は、欧州主要国と比較しても突出

 財政の持続可能性を確保するためには、引き続き、歳出分野全般にわたって聖域なく改革に取り組むとともに歳入面での取組も継続し、できる限り早期のPB黒字化達成に向けて取り組んでいくことが不可欠。

 

出所:財政制度分科会(平成30年4月6日開催)