新たな財政健全化計画等に関する建議

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会による「新たな財政健全化計画等に関する建議」が公表されました。当建議は、政府が「経済財政運営と改革の基本方針」において示すこととしている新たな財政健全化計画の基本的考え方等を、建議として取りまとめたものです。建議とは「意見」のことであるため、政府への強制力はないものの、一定の影響力を有する建議であることは間違いありません。

●新たな財政健全化計画の策定に向けた考え方
・2019 年10 月に予定されている消費税率の 10%への引上げによる増収分の使い道を見直し、その半分を、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等の施策に充てることを決定した。これに伴い、2020 年度のプライマリーバランス(以下、PB)黒字化目標の達成は困難となるものの、PB の黒字化を目指すという目標自体は堅持し、本年(平成 30 年)の「経済財政運営と改革の基本方針」において、PB 黒字化の達成時期、その裏付けとなる具体的かつ実効性の高い計画を示すこととした。
・後期高齢者の急増に伴う医療費・介護費の増加の一方、今後いよいよ人口減少のペースが加速し、制度の支え手が急速に減少していくことを踏まえると、これ以上財政健全化を遅らせる余地は全くない。不退転の決意で、持続可能な社会保障制度の確立に向けた取組を加速させる必要がある。
・「団塊の世代」が後期高齢者になり始める 2022 年度よりも前までの間に財政や社会保障制度の持続可能性の確保に向けて集中的に取り組むことが不可欠である。これにより、遅くとも「団塊の世代」が全て後期高齢者となる 2025 年度までに PB 黒字を安定的に確保しておく必要がある。

●社会保障分野において取り組むべき事項
・平成 30 年度予算に占める社会保障関連総額は 33.0 兆円と、一般会計歳出の 33.7%、一般歳出の 56.0%を占めるに至っている。高齢化の進展や医療の高度化・高額化等に伴い、社会保障関係費は増加の一途を辿っており、今後とも長期にわたり医療・介護を中心に増え続けることが見込まれる。
・こうした中、社会保障給付と国民負担のバランスを国際比較すると、我が国は給付に見合った負担となっておらず、かつ、このまま制度改革を行わなければ、高齢化等により、更にこのアンバランスが拡大していくことになる。広く国民の安心の基盤となる社会保障制度の持続可能性を確保する観点からも、給付と負担の見直しを含めた制度改革を進めることが不可欠であり、同時に財政負担を将来世代に先送りしている構造を改善していかなければならない。(中略)こうした中、自助・共助・公助のバランスの再構築、効率的な医療・介護提供体制の実現、高齢化や人口減少を踏まえた給付と負担の見直しという視点で、更に踏み込んで制度改革に取り組んでいかなければならない。
・医療費・介護費については、これまで国全体の負担能力(経済成長)を大きく超えるペースで増加しており、その大宗は公費・保険料負担の増加によって賄われてきた。公費負担は、財政赤字により次世代に負担を付け回しながら確保している状況であり、このままでは、今後とも公費の増加に大きく依存した形で費用の増加が続き、保険料負担も増加していくことになりかねない。
・こうした課題の中で、財政と医療・介護保険制度の持続可能性を確保していくためには、様々な改革の検討と実施が求められるが、その際の基本的な枠組みとして、以下の3つの改革の視点が重要である。
視点1)制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲
視点2)必要な保険給付の効率的な提供
視点3)高齢化や人口減少を踏まえた給付と負担の見直し

介護領域における具体的な事項としては、「ケアマネジメントの質の向上と利用者負担の導入」「軽度者へのサービスの地域支援事業への移行」など従来からの提言が意見されています。

出所;新たな財政健全化計画等に関する建議(財務省)