70 歳までの就業機会確保に向けた動き

企業における希望者全員の 65 歳までの雇用確保措置が整備されており、2019 年6月1日現在で、31人以上規模企業の高年齢者雇用確保措置の実施割合は 99.8%に達している。また、法に定める義務を超えた積極的な取組として、66 歳以上働ける制度のある企業の割合は 30.8%となっている。

70 歳までの就業機会の確保に関する施策を推進するに当たっては、65 歳までの雇用機会が確保されていることが前提となりますが、前出の通り、現行の高年齢者雇用安定法による 65歳までの希望者全員の雇用確保措置の導入に向けた取組は進みました。また、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消するための規定の整備等に関する法制度が 2020 年4月1日に施行(中小企業は2021 年4月1日)されることなども踏まえ、60 歳以降に継続雇用される労働者の適正な待遇の確保などの環境整備も着々と整えられてきています。

そうした前提のもと、労働政策審議会職業安定分科会では『70 歳までの就業機会の確保を図る措置』の建議をまとめました。

(1)70 歳までの就業機会の確保を図る措置として、定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入といった現行の高年齢者雇用確保措置と同様の措置に加えて、事業主による、特殊関係事業主以外の企業への再就職に関する制度の導入フリーランスや起業による就業に関する制度の導入、社会貢献活動への従事に関する制度の導入といった新たな措置を設け、これらの措置のうちいずれかを講ずることを事業主に対する努力義務とすることが適当である。

(2)現行の 65 歳までの雇用確保措置では、労働関係法令による規制(解雇権濫用規制・雇止め規制・最低賃金など)により、「就業継続の可能性」と「就業時の待遇の確保」といった点が担保されており、就業規則で明確化されている。70 歳までの各措置を講ずる場合に事業主が負う責務の程度など、事業主の関与の具体的な在り方に関しても、「70 歳までの就業継続の可能性」と「就業時の待遇の確保」といった点について均衡が求められる。70 歳までの各措置のうち、雇用による措置については、65 歳までの雇用確保措置と同様、労働関係法令による規制により、これらの点が担保されている。一方、70 歳までの各措置のうち、雇用によらない措置については、労働関係法令による規制が及ばないことから、努力義務について雇用によらない措置による場合には、事業主が制度の実施内容を明示して労使で合意し、労働者に周知するよう努めることが適当である。

(3)現行の 65 歳までの雇用確保措置では、希望する高年齢者全員を対象とした制度を導入することが事業主の義務とされているが、65 歳以降の高年齢者については、それ以前と比べて体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様なものとなる。このため、今般の努力義務を設けるに当たり、事業主が講ずる措置について、対象者の限定を可能とすることが適当である。なお、対象者を限定する場合には、その基準について労使で合意が図られることが望ましいことから、この点について指針において明示することが適当である。

(4)省略

(5)現行の 65 歳までの雇用確保措置は、60 歳まで雇用される高年齢者について、事業主が定年を 65 歳以上に定める又は定年を廃止し、同一の企業で高年齢者を雇用し続けることを念頭に置いた制度である。このうち継続雇用制度では、65 歳まで特殊関係事業主で雇用を継続することも可能とされているが、法律上、雇用確保措置の責務は、60 歳まで雇用していた事業主にある。従って、70 歳までの措置については、60 歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講ずる努力義務を負うと解することが適当である。

(6)事業主が 70 歳までの就業機会の確保に当たり具体的に実施する措置については、成長戦略実行計画に盛り込まれた選択肢のイメージごとに、それぞれ以下の内容とすることが適当である。
・「定年廃止」、「定年延長」、「継続雇用制度の導入」については、65 歳までの雇用確保措置と同様のものとすること。
・「他の企業への再就職の実現」については、特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同様に事業主間で契約を締結するものとすること。
・「個人とのフリーランス契約への資金提供」及び「個人の起業支援」については、定年後又は 65 歳までの継続雇用終了後に元従業員との間で、70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を設けるものとする。なお、どのような事業を制度の対象とするかについては、事業主が導入する制度の中で定めることができることとすること。
・「個人の社会貢献活動参加への資金提供」については、定年後又は 65 歳までの継続雇用終了後に元従業員が、①事業主が自ら実施する事業、②事業主が委託、出資(資金提供)その他の援助を行う団体が実施する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものに係る業務に 70 歳まで継続的に従事できる制度を設けるものとすること。なお、どのような事業を制度の対象とするかについては、事業主が導入する制度の中で定めることができることとすること。
②の場合には、事業主と事業を実施する団体との間で、定年後又は 65 歳までの継続雇用終了後に 70 歳まで引き続いて事業に従事させることを約する契約を締結するものとする。この際、事業主が導入する制度の実施内容に基づき、事業を実施する団体が高年齢者に対して 70 歳まで事業に従事する機会を提供する旨を明示するものとすること。併せて、事業主の出資(資金提供)その他の援助により高年齢者が従事する事業について、当該事業の円滑な実施に必要な出資(資金提供)その他の援助を要件とすること。
また、事業主の関与の具体的な在り方に関する他の選択肢との均衡の観点から、制度の対象となる事業は高年齢者に役務の提供等の対価として金銭を支払う有償のものに限ることとすること。

(7)多様で柔軟な働き方を踏まえて、1つの措置により 70 歳までの就業機会を確保することだけでなく、複数の措置を組み合わせることにより 70 歳までの就業機会を確保することも、努力義務を満たす措置を講ずるものであると解することが適当である。

以下省略

 
出所:雇用保険部会報告書