財政の国際比較と事例から

主要格付け会社による格付け比較

PBの国際比較(対GDP比)

○ 世界最高の債務残高/GDP比水準を抱えるわが国においてこそ、PB黒字化を達成する必要性は高いが、フロー収支でみてわが国の財政運営は必ずしも引き締まったものとは言えない。

1995~2015年の財政規模の推移の国際比較

○ 公共投資以外も含む「社会保障以外の支出(対GDP比)」でみれば、1995~2015年にかけて減少はしているが、諸外国と比べて特段厳しいものであるとは言えない。
○ 高齢化の進展に伴う「社会保障支出(対GDP比)」の急増により、政府の総支出(対GDP比)も大幅に増加。

戦前からの債務残高の推移

○ 第2次世界大戦時の巨額の軍事費調達のために多額の国債が発行された結果、終戦直前には債務残高対GNP比が200%程度にまで増大。この巨額の国債発行は日銀引受けによって行われたことから、マネーサプライの増加等を通じて、終戦直後にハイパーインフレーションが発生。
○ 政府は、ハイパーインフレーションに対応し、債務を削減する観点から、「預金封鎖」・「新円切替」を柱とする金融危機対策を講じるとともに、「財産税」・「戦時特別補償税」を柱とする財政再建計画を立案・公表。ハイパーインフレーションやこれらの施策により、債務残高対GNP比は大幅に低下したが、同時に国民の資産(特に保有国債)も犠牲になった。
○ こうした教訓に基づき、財政法上、「非募債主義」や「国債の日銀引受け禁止」が定められた。

日本の取るべき解決策は??

○ 「一時的」であることを家計が見透かせば上記の効果は生じない一方、「継続的」と見通せば、国債価格の下落をはじめ様々な問題が発生し、物価上昇も制御不能となるため、財政規律を一時的に放棄することによって物価水準の上昇を実現するという考え方は現実的でない。
○ 恒等式の右辺を見ても、基礎的財政収支が黒字であることは必要。わが国の場合、すでに見たように物価上昇で収支改善を期待することは必ずしも容易でなく、結局、基礎的財政収支を黒字にするための別途の収支改善努力が必要。

財政危機による国民生活への影響

出所:わが国財政の現状等について