持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて
「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて」は日本経済団体連合会(通称;経団連)の意見書です。
経団連は社会保障制度に関する意見書を定期的に出していますが、主張の軸は明確で、「制度の持続性確保に向けた取組みを急がなければならない。同時に、現役世代を中心に年々増加する社会保険料負担についても、伸びの抑制を図っていくことが不可欠である。」とし、「このままのペースで社会保険料の負担増が続けば、経済界が懸命に取り組む賃金引上げの効果を減殺し、可処分所得の増加が抑制される。このため、これに伴う現役世代の消費の低迷が懸念される。また、企業にとっても、生産、投資活動を行う上で、大きな重荷となり、負の影響をもたらす。これらは、わが国の経済成長を大きく下押しすることにつながる。」という機軸を前提に、医療や介護について具体的な提言が盛り込まれた注目度の高い意見となっています。
●介護分野で取り組むべき事項
今後の更なる需要増加を見据え、財源や資源が限られる中で制度の持続性を確保する観点から、給付面やサービス提供体制面からのより一層の効率化や適正化に向けた改革が不可欠であるとし、以下の具体的な提言をしています。
①地域差是正に向けた取組み
②「自立支援」や「重度化防止」の推進に向けた取組み
③効率的なサービス提供に向けた取組み
④介護保険制度における負担と給付のあり方の見直し
「自立支援」や「重度化防止」に当たっては、保険者機能の一層の強化はもちろんのこと、介護報酬上のリハビリテーション等に係るアウトカム評価を促進することが求められるとしているほか、介護サービス提供者の業務負担の軽減等の観点から、今回の報酬改定で小幅にとどまったIT・ロボット等の活用の促進を図るべく他の施設やサービスへの対象の拡大や、移乗介助といった他の機能の介護ロボットの活用を推進していくべきであるとしています。
さらに、
介護サービスの効率的な提供を図る観点から、規模に関してスケールメリットを発揮することも有効である。しかしながら、今回の報酬改定において、通所介護で大規模型の報酬が引き下げられ、事業者の効率化への意欲を削ぎかねない見直しが行われた。今後、想定される介護サービスの需要増加に対応していく観点からも、スケールメリットを発揮して、より効率的なサービス提供が促されるような施策の検討を進めることが必要である。
とするなど、大企業が加盟する経済団体の立場からの提言が盛り込まれています。