勤続10年以上の介護福祉士に8万円賃上げされるわけではない
昨年末に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で提示された介護職員へのさらなる処遇改善。
ニュースは「勤続10年以上の介護福祉士に8万円の賃上げ」と<報道されてていましたが、これはミスリードです。
「人づくり革命」に向けた新たな政府の政策パッケージの原案全文を日本テレビが入手した。待機児童や介護問題の解消に向け保育士や介護職員の処遇改善が明記されている。(略)「人生100年時代において、介護は、誰もが直面し得る現実かつ喫緊の課題である」として、介護職員の処遇改善も明記されている。具体的には「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について、公費1000億円程度を投じ、月額平均8万円相当の処遇改善を行う」としている。(以下、略)
出所:日テレ24「「保育士や介護職員の処遇改善」新政策原案」
新しい経済政策パッケージには処遇改善加算に関し、以下の記載がされています。
介護人材確保のための取り組みをより一層進めるため、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進める。具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めることを前提に 介護サービス事業所に勤続10年以上の介護福祉士について月額8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に処遇改善を行う。実施時期は、消費税率の引上げに伴う報酬改定において対応し、2019年10月から実施する。
出所:内閣府「新しい経済政策パッケージ」
ポイントは以下です。
1.『月額8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠』
月額8万円というのはこの処遇改善加算の予算総額を決める際の基準に過ぎません。8万円の賃上げというと、他産業との賃金差でもありますので、今回の処遇改善でこれですべて埋まるのでは、という期待もありましたが、そういうわけではありません。
2.『経験・技能のある職員に重点化』
上記で「10年以上勤務=8万円の賃上げ」ではないとしましたが、「経験・技能のある」職員を優先して処遇改善の対象にしましょうというのが前提です。これは従来の処遇改善加算の考え方を踏襲するものです。
3.『他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める』
これまでの処遇改善加算は、介護職員だけに限定されてきました。対象者の範囲に関しては、介護給付費分科会でもその是非が議論されいました。今回このような記載があるということは、これまでの介護職員に限定してきた施策への問題意識があることが伺えます。
なお、「新しい経済政策パッケージ」は閣議決定の段階にあります。
閣議決定は、政府がここで決めた内容に関連する法律の制定を「強い意思で目指す」と表明しているにすぎないため、実際にこれを法律として制定するためには国会の承認を得る必要があります。消費税の10%への引き上げを前提としている点にも注意が必要です。