東京商工リサーチ:2017年「医療・福祉事業」の倒産状況
信用調査会社大手の東京商工リサーチが毎年公表している「医療・福祉事業」の倒産状況の2017年集計が公表されました。同趣旨の公調査統計がないため、東京商工リサーチの医療・福祉事業倒産動向が業界の倒産動向ベンチマークとして使われています。なお、同調査対象の「医療,福祉事業」には、病院、医院等の医療機関、老人福祉・介護事業のほか、マッサージ業や鍼灸院などの療術業を含んでいます。
■ポイント
〇2017年の「医療,福祉事業」の倒産は速報値で249件にのぼり、2000年以降で最多
〇このうち、業種別で最も多かったのが「老人福祉・介護事業」の111件
〇負債総額も前年を上回ったが、全体では負債1億円未満の小・零細規模が84.7%を占めるなど、小規模倒産が目立った。
【倒産件数推移】東京商工リサーチ公表データをもとに再構成
■TOPICS
- 負債1億円未満の小規模倒産が17.8%増
- 業種別、「老人福祉・介護事業」が2000年以降で最多を更新
- 原因別、販売不振が過半数
- 「老人福祉・介護事業」の倒産原因、「事業上の失敗」が4割増
- 形態別、事業消滅型の破産が9割
- 地区別件数、9地区のうち5地区で増加
■総括
- 高齢化社会の成長産業として注目される医療福祉業界だが、介護職員の人手不足が深刻化するなど、経営のかじ取りが難しさを増し、業界内では淘汰の動きが加速している。
- 全国の医療,福祉事業者1万4,834社の2017年3月期決算は、「増収増益」企業の構成比が33.1%に対し、「減収減益」企業も同29.1%と拮抗した。さらに、「減益」企業は51.4%と半数を超え、同業との競合や人手不足を補うための人件費上昇が収益悪化につながり、収益確保が難しいことが透けて見える。
- 2018年度の診療・介護報酬の同時改定では、診療報酬が医師技術料などの「本体」部分を0.55%引き上げる一方で、「薬価」などの引き下げにより全体ではマイナス1%前後になる見通しになった。また、介護報酬は0.54%の引き上げに決定したが、通所介護での事業規模やサービス提供時間に応じた基本報酬の細分化など「給付適正化」も進められる方向である。
- このように医療・福祉関連業界では、淘汰の動きに緩みがないことから、引き続き今後の動向から目を離せない。