介護人材に求められる機能の明確化 とキャリアパスの実現に向けて

『社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会』という長い名前の員会が平成26年10月以降、現在に至るまで開催されています。

当委員会は介護人材の確保施策の検討を設置目的とし、とりまとめられた報告書が介護人材の構造転換(「まんじゅう型」から「富士山型」へ)が提示された「2025 年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」(平成27年2月)です。

その後、当報告書の具体的施策ともいえる「社会福祉士に求められる役割・機能」と「介護人材の機能とキャリアパスの実現」が議論され、平成27年10月に「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」という報告書がまとめられています。

ここで示された方向性は以下となります。

〇利用者の多様なニーズに対応できるよう、介護職がチームで関わっていくこと(チームケア)を推進するとともに、チーム内の介護職に対する指導やフォローなど、介護サービスの質の向上や人材の定着が図られるよう、一定のキャリアを積んだ介護福祉士をチームリーダーとして育成

〇専門職としての評価と資質を高めるため、現場のケアの提供者の中で中核的な役割を果たすことができ、介護ニーズの複雑化・多様化・高度化に対応できる介護福祉士を養成

〇介護人材のすそ野を拡げ、介護未経験者を含む多様な人材の参入を促進するとともに、介護分野に参入した人材が意欲・能力に応じてキャリアアップを図り、キャリアに応じた役割を担うことができる仕組みを構築

 

一事業者ではなかなか対応できない対応策(介護福祉士養成課程におけるカリキュラムの見直しなど)がある一方、個々の事業所にもその役割を担うことが期待されているのが、「人材の意欲・能力に応じたキャリアアップの仕組み」「介護職リーダーの育成」です。

介護事業所における介護人材の育成にあたっては『職場におけるキャリアパスの明確化等が人材育成に有効』という前提(定説?)からも、キャリアアップの仕組みにはキャリアパスが必要とされることは確実です。
 
このことは何を示唆するでしょうか?
 
 
キャリアパスの明確化(確立)されていない事業所は人材育成ができない事業所であるという判断がなされる可能性が高い、と考えることが妥当です。

平成30年介護報酬改定では処遇改善加算Ⅳ及びⅤが廃止という流れになります。これは、「人材育成しない介護事業者は退出すべし」という国のメッセージにほかなりません。

消費税増税のタイミング(2019年10月)でのさらなる処遇改善の拡充が検討され、「月額8万円相当の処遇改善」が注目されるわけですが、上記報告書を読む限りは、さらなる足切りの可能性も否定できません。

現在、処遇改善加算Ⅲを算定している事業者(=多くはキャリアパス要件Ⅱを満たしている場合が多いと想定される)に残された時間はそれほど多くないのかもしれません。

ぜひ前向きな一歩を踏み出しましょう。キャリアパス作りは決して難しくはありません。
 
 
【参考】

これまで求められてきた役割に加え、今後、より介護福祉士に求められる役割
〇 現場のケアの提供者の中で、チームリーダーのもと専門職として中核的な役割を果たすことが求められるとともに、認知症高齢者の増加や高齢単身世帯の増加、世帯構成の変化、地域移行の推進による地域で暮らす障害者の増加などに伴う生活支援も含めた介護ニーズの複雑化・多様化・高度化への対応。
〇 本人のエンパワメントを意識した支援や家族の介護負担の軽減に資する助言。
〇 介護予防の観点から、利用者が元気で居続けられるような支援。
〇 医師、看護師、リハ職などの多職種と協働したケアのさらなる実践。

処遇改善加算で給与は上がっていきますが、その分求められるものも高くなりますね。

出所:「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」