令和2年(2020年)診療報酬改定の基本方針

基本認識

▶健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
○ 我が国は、国民皆保険や優れた保健・医療システムの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成し、人生100年時代を迎えている。人口構成の変化を見ると、2025年にはいわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となり、2040年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となって高齢者人口がピークを迎えるとともに現役世代(生産年齢人口)が急激に減少していく。
○ このような中、社会の活力を維持・向上していくためには、健康寿命の延伸により高齢者をはじめとする意欲のある方々が役割を持ち活躍のできる社会の実現と「全世代型社会保障」を構築していくことが急務の課題ではないか。
○ また、我が国の医療制度は、人口減少が進展する中で、地域医療の確保、少子化への対応といった様々な課題にも直面している。これらの課題に総合的に対応しながら、世界に冠たる国民皆保険を堅持し、あらゆる世代の国民一人一人が状態に応じた安全・安心で効率的・効果的な質の高い医療を受けられるようにすることが必要不可欠である。
○ そのためには、将来の医療提供体制の展望を見据え、国民一人一人予防・健康づくりに関する意識を涵養し、健康寿命の延伸により長寿を実現しながら、患者・国民にとって身近でわかりやすい医療を実現するとともに、医師等の働き方改革を推進することが必要であり、その際には、制度の安定性・持続性を確保しつつ経済・財政との調和を図ることが重要ではないか。
▶ 患者・国民に身近な医療の実現
○ 患者にとって身近でわかりやすい医療の実現のためには、地域の実情に応じて、可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、地域包括ケアシステムを構築するとともに、かかりつけ医機能や患者への情報提供や相談・支援を充実することが必要ではないか。
○ また、疾病構造やニーズの変化・多様化、医療需要が増える中での働き手の減少、厳しい財政状況など、医療を取り巻く社会経済状況を踏まえると、我が国の医療制度に関わる全ての関係者(市民、医療提供者、行政、民間企業等)が、医療のかかり方の観点も含め、それぞれの担う役割を実現することが必要ではないか。
▶ どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
○ 2040年の医療提供体制の展望を見据え、地域医療構想の実現に向けた取組、実効性のある医師偏在対策、医師等の働き方改革を推進し、総合的な医療提供体制改革を実施していくことが求められている。
○ その中で、医師等の働き方改革については、将来の医療ニーズの変化や現役世代の減少、医療技術の進歩等も踏まえつつ、 医療の安全や地域医療の確保、患者や保険者の視点にも留意しながら、医師等の負担軽減を図ることが重要ではないか。
▶ 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
○ 制度の安定性・持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持するためには、国民各層の制度に対する納得感を高めることが不可欠であるとともに、医療政策においても経済・財政との調和を図っていくことが重要ではないか。
○ そのためには、「経済財政運営と改革の基本方針2019」や「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」等を踏まえつつ、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療機関の収入や経営状況、保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえるとともに、無駄の排除、医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図ることが必要ではないか。

 

2020年度診療報酬改定の基本的な視点

(1)医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進する
(2)患者・国民にとって身近であるとともに、安心・安全で質の高い医療を実現する
(3)医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムを推進する
(4)効率化・適正化を通じ制度の安定性・持続可能性を向上させる

出所:医療保険部会